天才望遠鏡
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4.0 • 1件の評価
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- ¥1,700
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発行者による作品情報
「将来の夢」を思い出せない全ての大人達へ
「才能を持った人間なんて、実はたくさんいる。でも、天才は違う。天才は、才能を見つけた連中が、一方的にそう名づけるんだ」
デビュー10年。爆発的に売れることはないけれど、きちんと締め切りを守り、編集者に無理難題を押し付けずに着実に仕事をこなす作家・星原イチタカ。一方、同期デビューの釘宮志津馬は偏屈で横暴であることを自覚しながらも、大人気作家であることから周囲に丁重に扱われることに対し憤りを感じている。イチタカの才能を軽んじる向きもある中、釘宮だけが彼の「天才」性を”観測”していた。
藤井聡太七冠の記録を塗り替え、史上最年少でプロ入りした中学生棋士、タピオカミルクティーの味もマカロンの味も知らない、かつての「氷上の妖精」、気がつかぬままに抜群の歌声を持ち、オーディションを駆け上がる天才中学生……。
描かれるのは5人の天才たち。彼らと、彼らを観測し続けた人々の姿が紡がれる連作短編集。
【目次】
星の盤側
妖精の引き際
エスペランサの子供たち
カケルの蹄音
星原の観測者
APPLE BOOKSのレビュー
“天体望遠鏡”ならぬ『天才望遠鏡』と題された本作は、天才と称される人を見つめながら生きる人々の心模様を5編の連作短編で描く。棋士やフィギュアスケーターなど各分野で輝く天才たちの存在を中心に据えつつ、その存在に憧れ、翻弄(ほんろう)され、支えにもなる周囲の人々の姿にスポットを当てた構成が新鮮。天才になれない人々の人生こそが世の中の大半を作り上げている、というリアリティが物語に厚みを与えている。特に、天才ベストセラー作家と泣かず飛ばずの中堅作家の友情をつづる最終話には、作者自身の体験や思いがにじみ出ているよう。抜きん出た才能を目の当たりにすると、人はつい「あの人は天才だから」と、自分とは違う存在のように感じてしまうことがある。しかし本当に大切なのは、天才かどうかではなく、その人との出会いを通して自分がどう生きていくかに目を向けることだと、この物語は静かに語りかけてくる。額賀澪のデビュー10周年記念作品。