



奪還―日本人難民6万人を救った男―
-
-
3.0 • 5件の評価
-
-
- ¥2,200
-
- ¥2,200
発行者による作品情報
太平洋戦争の敗戦で朝鮮半島北部の邦人は難民に。飢餓や伝染病で斃れゆく老若男女の前に忽然と現れ、ソ連軍の監視をかいくぐり、母国へと導く男――彼はかつて国家から断罪されたアウトサイダーだった。時間も資金も情報もない中で、頭脳と度胸を駆使した決死の闘いが始まる。見返りを求めない「究極の利他」が胸を打つ実話。
APPLE BOOKSのレビュー
第2次大戦後、朝鮮半島北部に残された日本人6万人を母国に帰還させ、「引き揚げの神様」と呼ばれた無名の民間人、松村義士男の活躍を記した感動のノンフィクション。1945年8月15日、日本の敗戦により朝鮮半島の植民地支配が終結。北緯38度線を境に、南朝鮮に進駐した米軍が在留邦人の日本への早期送還を徹底させ、45万人の引き揚げを翌年の1946年春までにほぼ完了した一方、北朝鮮に進駐したソ連軍は38度線を封鎖し、25万人の在留邦人が北朝鮮に閉じ込められる。加えて旧満州国と国境を接する北朝鮮北部はソ連軍による侵攻で戦火にさらされ、6万人が家を捨てて避難民となった。栄養失調と劣悪な環境下で感染症が流行し、命を落とす人々。苦境の中、残留邦人の南朝鮮への集団脱出と、そこからの本土引き揚げを画策したのが松村義士男だった。戦前、労働運動に加担し、治安維持法違反で2度逮捕され「非国民」とされた人物が、北朝鮮の共産党人脈を駆使し、旧朝鮮総督府やソ連軍と渡り合い、列車や漁船による脱出を敢行する。その姿を膨大な資料と証言で描いた本書は、知られざる英雄の物語であるだけでなく、終戦直後の日本人難民史としても秀逸。