妖刀に映すは黒き者(下)
発行者による作品情報
あらすじ
黒いシミが一点、真っ白い中心に。その黒はやがて、白すべてを染め上げる……
荒谷真汰は、昼間授業は寝てばかりで教師から反感を買い、部活もしていない、友達もいない中学二年生。そんな彼の夜の姿は、この世を去った後も憎悪や嫉妬、悔恨に怨恨といった黒い感情に落ち、生きている者にまで害を成す黒き者を妖刀〈曼陀羅〉と〈伊迦魅〉で斬る、妖刀使いだった。
妖刀は、かつて黒き者だった中で、強力な力を持つ者が封印された特別な刀だ。黒き者を斬るのは、黒き者。持ち手は、徐々にそれに染まる――まさにもろ刃の剣だった。
ある日、真汰の学校で女子生徒の飛び降り自殺が起きる。いじめを苦に自殺したのだろうと囁かれていたが、真汰は彼女が自殺する数時間前に『死んでやる!』とある教師に叫んでいたのを聞いていた。
その後、クラスメイトである小宮りこが、一年生の時にクラスメイトの大半から無視をされていたところを、自殺した女子生徒に助けてもらったのだと真汰に告げる。助けたその女子生徒は、りこの代わりにいじめの対象になってしまったのだ。『わたしのせい』と自責の念に駆られているりこに、真汰は自分を重ねた。
亡くなった母が泣いていたのは、自分のせいだと思っている自分に……
その間に、自殺した女子生徒は、いじめへ復讐心からか黒き者になりつつあった。窓ガラスが突如割れ、ひとりの男性教師も負傷する。彼が、『死んでやる!』と叫ばれた人物だった。りこは、女子生徒がその教師に特別な感情を抱いていたようだとも真汰に教えてくれた。
放っておけなくなった真汰は、叔父であり、妖刀使いの先輩でもある文彦に相談するが、身近な人物への任務は禁じられていると反対される。しかし、やはり放っておくことができなかった。
自殺事件をキッカケに、母と繋がりがあったらしい記者も現れ、自身の黒き感情に落ちていくばかりの真汰も、彼の周りも徐々に変化が訪れる。