密航のち洗濯 密航のち洗濯

密航のち洗‪濯‬

ときどき作家

宋恵媛 その他
    • ¥2,000
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発行者による作品情報

〈密航〉は危険な言葉、残忍な言葉だ。だからこれほど丁寧に、大事に、すみずみまで心を砕いて本にする人たちがいる。書き残してくれて、保存してくれて、調べてくれて本当にありがとう。100年を超えるこのリレーのアンカーは、読む私たちだ。心からお薦めする。

――斎藤真理子さん(翻訳者)



本書を通して、「日本人である」ということの複雑さ、曖昧さ、寄る辺のなさを、多くの「日本人」の読者に知ってほしいと切に願います。

――ドミニク・チェンさん(早稲田大学文学学術院教授)



【本書の内容】

1946年夏。朝鮮から日本へ、

男は「密航」で海を渡った。

日本人から朝鮮人へ、

女は裕福な家を捨てて男と結婚した。

貧しい二人はやがて洗濯屋をはじめる。



朝鮮と日本の間の海を合法的に渡ることがほぼ不可能だった時代。それでも生きていくために船に乗った人々の移動は「密航」と呼ばれた。



1946年夏。一人の男が日本へ「密航」した。彼が生きた植民地期の朝鮮と日本、戦後の東京でつくった家族一人ひとりの人生をたどる。手がかりにしたのは、「その後」を知る子どもたちへのインタビューと、わずかに残された文書群。



「きさまなんかにおれの気持がわかるもんか」



「あなただってわたしの気持はわかりません。わたしは祖国をすてて、あなたをえらんだ女です。朝鮮人の妻として誇りをもって生きたいのです」



植民地、警察、戦争、占領、移動、国籍、戸籍、収容、病、貧困、労働、福祉、ジェンダー、あるいは、誰かが「書くこと」と「書けること」について。



この複雑な、だが決して例外的ではなかった五人の家族が、この国で生きてきた。



蔚山(ウルサン)、釜山、山口、東京――

ゆかりの土地を歩きながら、100年を超える歴史を丹念に描き出していく。ウェブマガジン『ニッポン複雑紀行』初の書籍化企画。



【洗濯屋の家族】

[父]尹紫遠 ユン ジャウォン

1911‐64年。朝鮮・蔚山生まれ。植民地期に12歳で渡日し、戦後に「密航」で再渡日する。洗濯屋などの仕事をしながら、作家としての活動も続けた。1946-64年に日記を書いた。



[母]大津登志子 おおつ としこ

1924‐2014年。東京・千駄ヶ谷の裕福な家庭に生まれる。「満洲」で敗戦を迎えたのちに「引揚げ」を経験。その後、12歳年上の尹紫遠と結婚したことで「朝鮮人」となった。



[長男]泰玄 テヒョン/たいげん

1949年‐。東京生まれ。朝鮮学校、夜間中学、定時制高校、上智大学を経て、イギリス系の金融機関に勤めた。



[長女]逸己 いつこ/イルギ

1951年‐。東京生まれ。朝鮮学校、夜間中学、定時制高校を経て、20歳で長男を出産。産業ロボットの工場(こうば)で長く働いた。



[次男]泰眞 テジン/たいしん

1959‐2014年。東京生まれ。兄と同じく、上智大学卒業後に金融業界に就職。幼い頃から体が弱く、50代で亡くなった。

ジャンル
小説/文学
発売日
2023年
1月24日
言語
JA
日本語
ページ数
282
ページ
発行者
柏書房
販売元
Mobilebook.jp, Inc
サイズ
36.9
MB