尋ねて雪か
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発行者による作品情報
雪の札幌。佐古田史朗はゴルフ場で盗まれたという数億にのぼる税金逃れの通帳を取り戻す仕事を依頼され、犯人のマンションに侵入。ところが、すでに部屋は荒され、殺害された死体が…。錯綜する過去の愛と憎悪。哀切な長篇ハードボイルド。
APPLE BOOKSのレビュー
志水辰夫の「尋ねて雪か」。恋愛小説から時代小説まで幅広いジャンルを手掛ける志水は、独特の叙情的な文体でファンの熱い支持を集めている。本作は彼の初期の作品の一つ。主人公・佐古田史朗の硬質でどこか物悲しい人物像、その場に漂う不穏な空気までをも見事に描き出した、濃密な出だしで読み手を惹きつける。東京で佐古田組の一翼を担う史朗は、札幌の金融会社と数億円の行方をめぐる追跡に関わるうちに、自身の過去の苦悩と向き合うことになる。その想いに突き動かされる史朗の心情を描きながら、同時に迫力あるストーリーをも展開させる緻密な構成力と強い筆致が魅力。裏社会の取り引きを背景に人間の弱さや姑息さを浮き彫りにし、家族への愛情や葛藤を浮かび上がらせる。心の内側に一歩踏み込む長編ミステリー。