〈山東〉滑稽文選[〈戯作四書〉京伝予誌・四書京伝予誌]
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Publisher Description
〈山東〉滑稽文選[〈戯作四書〉京伝予誌・四書京伝予誌]
【判型】中本1冊。縦182粍。
【作者】山東京伝(岩瀬醒サムル・北尾政演・菊亭主人・醒斎・岩瀬田蔵)作・序。
【年代等】寛政2年1月自序・初刊。江戸後期後印。[江戸]馬漢楼蔵板。[江戸]英文蔵売出。
【備考】分類「洒落本・滑稽本」。四書の注解書『経典余師』をもじって題名とする。『大学』を「大楽(ダイラク)」、『中庸』を「通用」、『論語』が「豊後」、『孟子』を「申(モウシ)」ともじって4つの章を立て、それぞれ原書の文に基づいて洒落た漢文体戯文を冒頭に置く。「大楽」は、様々の楽しみの中にも女色を最高とするが、それも金によるのでなく、その身に応ずるという心より得られると論ずる。「通用」では、箕輪(ミノワ)の別荘に引き込んでいる烏有(ウユウ)という隠者の前に、質物の精が現れて、質の置き主の不心得を説く。「豊後」は、さる新道の豊後節の浄瑠璃稽古所の描写で、女師匠難波津野路梅(ナニワヅノジウメ)と名乗る女芸者お梅のもとに店の年季者や手代などが集まって来て稽古が始まる。お梅とその母親が、いずれも師匠の色にひかれて来る連中を程よくあしらうさまをおかしく描く。「申」は、遊客・富士井芸吉と遊女・大岸屋花衣(ハナギヌ)とが、浅草中田圃で情死しようとするのを、石地蔵が声をかけて、芝居などで美化された情死のあさましい現実を暴露して、思い止まらせることを描く。以上は、寛政改革による儒教奨励に呼応してなされた戯作である。時勢を見るに敏なこの作者を示しているが、黄表紙などに見られる、新政を茶化し、揶揄する気分はほとんどない。4章のうち、「豊後」だけが洒落本の会話文体を主としたもので、陰影のある描写で男女の心理をうがち、また女芸者に対する批判をも交え、新時代の世相などにも触れた佳作となっている。「申」は、天明5年の旗本・藤枝外記と吉原大菱屋綾衣の情死事件に取材したものである。後に、目録・口絵・跋を除いて初板の小本を中本型に改刻した英文蔵(青雲堂)板、その改題本『〈山東〉滑稽文選』があり、また中本3冊に分けて『京伝余師』と題した版もある(「日本古典文学大辞典」参照)。/四書(大学・中庸・論語・孟子)の経典余師をもじったパロディで、「大楽」「通用」「豊後」「申シ」からなる。明治18年に挿絵を添えた小本仕立ての改編本『〈戯作〉四書京伝余師(〈戯作四書〉京伝予誌)]』が刊行された。