帰郷
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3.0 • 1件の評価
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- ¥470
発行者による作品情報
エンジンが大好きな組立工がいた。故郷の自動車エンジン工場勤務から、ある日、F1チームのエンジン組み立てメンバーに選ばれた。サーキットを転戦して世界を回る毎日。すばらしい日々だ。帰国休暇にはガールフレンドに土産をやり、土産話をするのも、その栄光の一部だった。3年の出向期間が終わり、故郷に戻った男を待っていたのは、しかし味気ない、退屈な生活だった──喜びのあとに訪れる悲しさ、“成熟と喪失”を描いた第111回直木賞受賞作ほか、傑作短篇が全6篇。
APPLE BOOKSのレビュー
第111回(1994年上半期)直木賞受賞作。スポーツ関係のノンフィクションも数多く手掛ける海老沢泰久の短編集。F1チームのスタッフとして海外で活躍後、日本に帰国し、虚脱に陥るエンジン組立工の毎日「帰郷」、平凡な主婦の旅先での出来事「静かな生活」、プロ野球のファーム選手と小さなバーを経営するママとの関係「夏の終わりの風」、セックスを巡る作家と女優のホテルでのやり取り「鳥は飛ぶ」、渓流釣りに出かけた主人公が出会ったとある夫婦との物語「イブニング・ライズ」、一人の女性に振り回される男の焦燥と諦観「虚栗」の6編を収録。どの作品も“散文じみた”虚飾のない平易な文章で描かれたシンプルなストーリーで、いわく言い難い男女の機微を鮮やかに描き出している。気取りのない氏の文体にはヘミングウェイからの影響が色濃く見て取れ、中でもニック・アダムスものの傑作『ニつの心臓の大きな川』 をほうふつとさせる「イブニング・ライズ」に顕著。満ち足りない思いを抱えながら生きる人々の姿を描いた、「帰郷」「夏の終わりの風」の2編は、文体に抑制を効かせたハードボイルドならではの余情にあふれた傑作だ。