彼女が探偵でなければ
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4.7 • 3件の評価
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- ¥2,000
発行者による作品情報
森田みどりは、高校時代に探偵の真似事をして以来、人の〈本性〉を暴くことに執着して生きてきた。気づけば二児の母となり、探偵社では部下を育てる立場に。時計職人の父を亡くした少年(「時の子」)、千里眼を持つという少年(「縞馬のコード」)、父を殺す計画をノートに綴る少年(「陸橋の向こう側」)。〈子どもたち〉をめぐる謎にのめり込むうちに彼女は、真実に囚われて人を傷つけてきた自らの探偵人生と向き合っていく。謎解きが生んだ犠牲に光は差すのか。痛切で美しい全5編。
APPLE BOOKSのレビュー
探偵として母として、真実を突き止めずにはいられない主人公に2022年から2024年までの間に起きた五つの物語をつづる『彼女が探偵でなければ』。人気推理小説『五つの季節に探偵は』の続編。探偵会社サカキ・エージェンシーで働く探偵、森田みどり。彼女がさまざまな葛藤や苦悩を抱えた少年たちと出会い、気になってしまう謎にのめり込んでいく姿を連作短編として描く。時計職人の父を亡くした少年、千里眼を持つという少年、自分を「誘拐」した父を殺そうと計画する中学生、壁の落書き、物事に異様なこだわりを持つ息子…。真実は知らない方がいいこともある。しかし、みどりは真実にたどり着くまで、誰かを傷つけたとしても明らかにしたいと追求してしまう。彼女はそんな自身の特性に悩みながらも、人の秘密や悲しみの謎に向き合っていく。彼らの背景にある複雑な物語がみどりの鋭い観察眼や考察とともに明らかになっていく様子には、絡み合った糸をほどいていくような感覚が味わえるだろう。すべてがハッピーエンドではないからこそ深みのある作品となっている。