復讐するは我にあり
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3.9 • 8件の評価
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- ¥880
発行者による作品情報
昭和38年、高度成長に沸く日本国中が震撼した連続殺人事件。言葉巧みに人を騙し、殺し、日本列島を縦断しながら犯罪を重ねる男に対し、警察は史上初の全国一斉捜査を開始した。関係した女、目撃情報は多数あり、立ち回り先の遺留品や人をおちょくったハガキ……証拠の山を残しつつ、空前の捜査網をかいくぐり続けられたわけは? 78日間に及ぶ逃亡、10歳の少女が正体を見破るという予想外の逮捕劇、そして死刑執行まで、実話を元に克明に描く傑作長篇。直木賞受賞作。
APPLE BOOKSのレビュー
第74回(1975年下半期)直木賞受賞作。1963年から1964年にかけて5人を殺害し、戦後最悪の連続殺人といわれた事件を題材にした小説で、紆余曲折の末、今村昌平監督、緒形拳主演で撮られた映画も評価が高い。1963年10月、福岡で専売公社の集金人2名を殺害して現金を奪った榎津巌が指名手配された。敬虔(けいけん)なカトリック教徒の息子でありながら、千に一つしか本当のことを言わない「千一」と自ら認める榎津は、逃亡中も京大教授や東大出の弁護士をかたって大胆な詐欺を働き、逃亡先の静岡県浜松市で宿屋の母娘を殺し、さらに東京都豊島区で老弁護士を殺害。1964年1月3日に熊本で逮捕されるまで日本を縦断して犯行を重ね、78日間の逃亡を続けた。トルーマン・カポーティの『冷血』を意識した著者は、徹底した取材を重ね、犯行の経緯を時系列で追い、さらに逮捕から取り調べ、そして死刑執行に至るまでを再構成。犯罪者の内面を直接描くことなく、膨大な関係者の証言、供述調書、取り調べ時のメモ、新聞や雑誌の記事、死刑執行の死亡報告などから、その姿を浮き彫りにした本作は、日本におけるノンフィクションノベルの嚆矢(こうし)にして金字塔である。