



我が友、スミス
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4.0 • 2件の評価
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- ¥530
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発行者による作品情報
「別の生き物になりたい」――筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし、大会で結果を残すためには筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった…。鍛錬の甲斐あって身体は仕上がっていくが、職場では彼氏ができてダイエットをしていると思われ、母からは「ムキムキにならないでよ」と心無い言葉をかけられる。モヤモヤした思いを解消できないまま迎えた大会当日。彼女が決勝の舞台で取った行動とは? 世の常識に疑問を投げかける圧巻のデビュー作!
APPLE BOOKSのレビュー
ボディビル大会に挑戦することになった女性が、筋トレや自分の体を通じて社会と向き合っていく『我が友、スミス』。スミスとはバーベルの左右にレールがついた人気マシンのこと。ジムに1台しかないこのマシンを使いたくても、ずっと占領されていることにいら立ちを感じる主人公、U野の描写から始まる。ボディビル大会の元選手、O島に大会出場を勧められたU野は、3台のスミスがある彼女のジムに魅了され、そこで本格的に筋トレと食事管理を開始する。ダイエットや美容のためではなく、筋肉をつけて、自分の体を鍛えたい、力強くなりたいというU野が、理想の体に近付いてきた時に感じたある違和感。それは、大会では己の体とストイックに向き合うだけでなく、美しさのための肌管理、優雅なポージング、ヘアスタイル、アクセサリー、そして満面の笑みと、審査基準に「女らしさ」を求められることだった…。第166回芥川賞の候補作品。主人公や登場人物の名前をあえて苗字にし、さらにアルファベットを用いたことで、漢字姓によるイメージをそぎ落とし、先入観なくジェンダーレスな視点で読み進められることも含め、新しい読書体験となるだろう。