



改訂完全版 異邦の騎士
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4.4 • 37件の評価
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- ¥880
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発行者による作品情報
失われた過去の記憶が浮かび上がり、男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活に忍び寄る新たな魔手。名探偵・御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリー『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。
APPLE BOOKSのレビュー
“ゴッド・オブ・ミステリー”の異名を持つ作家、島田荘司の代表作「御手洗潔シリーズ」のエピソード0とでもいうべき『異邦の騎士』。1979年に当時30歳の島田が初めて書いた小説でありながら、長らく日の目を見ず、1988年に初版が発行され、1998年に全面改訂されたという異色作だ。ある日、男は目が覚めると公園のベンチの上にいた。その男は自分の名前も、なぜそこにいるのかも思い出せない。偶然出会った良子という女性に拾われた男は、石川敬介と名付けられ、良子と共に新しい人生を送ることになる。だが、失われた過去の記憶の断片から、自分には妻子がおり、その妻子に手をかけたのではという疑念が生じていく。自分が誰かも分からないという不安な状況から手にした、ささやかながらも幸福な暮らし。敬介はその平穏をぶち壊すかもしれない“真実”におびえながら、良子との幸せな未来のために真相に近づいていく。一方、良子は敬介を失う恐れのためか、精神的に不安定になっていく。恋愛小説のようでありながら、話が進むにつれ、本格ミステリーの形をあらわにしていく流れは鮮やか。誕生からして異色の経緯をたどったこの作品は、今や不滅のマスターピースだ。