放課後スプリング・トレイン
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5.0 • 1件の評価
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発行者による作品情報
四月のある日、福岡市内の高校に通う私は、親友・朝名の年上の彼氏を紹介される。そのとき同席していた大学院生の飛木さんは、私の周りで起こる事件をさらりと解き明かしてみせる不思議な人だった。天神に向かう電車で出会った奇妙な婦人、文化祭で起きたシンデレラのドレス消失事件……。福岡の街で私はたくさんの答えを探している。解くことが叶わなかった問題も、真相に辿り着けなかった謎も、すべて覚えておこう。今日は見えずとも、形を変えて色を変えて、いつの日か扉を開ける鍵が手に入ると信じて。福岡・天神を舞台に贈る、透明感溢れる青春ミステリ。
APPLE BOOKSのレビュー
期待の新人作家・吉野泉のデビュー作「放課後スプリング・トレイン」は、多感な少女時代の友情や恋愛などを、純度の高い爽やかな文体で描いたミステリー小説。福岡市内の高校に通う女子高生・吉野は、親友・朝名の紹介で、理学部の大学院生・飛木と出会う。吉野の周囲で巻き起こる謎の数々を、物理や科学の知識を駆使して次々と解決していく飛木。その鮮やかな推理に吉野は次第に魅了されていく。電車内で出会った奇妙な婦人に隠された意外な事実、学園祭の舞台本番直前に消えてしまったシンデレラの衣裳の行方など、作中で描かれる謎は、日常に潜むささやかなもの。何気ない日々を送る中で人の心の機微に触れ、友人との関係や学業について悩み、考え、そして前に進んでいく主人公たち。存分に放たれる青春の輝きが眩しい一方で、読み進めるほどに懐かしくも、切ない気持ちにもなる。思春期特有の感情の揺れを瑞々しい言葉で紡いだ本作の読後は、彼女たちのきらめくような高校生活を追体験したような、清々しい気持ちに包まれることだろう。