



教育
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2.9 • 69件の評価
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- ¥1,700
発行者による作品情報
「この学校では、一日三回以上オーガズムに達すると成績が上がりやすいとされていて――」
勝てば天国、負ければ地獄の、規律と欲望が渦巻く学校――私の幸せは、正しいのか?
人間の倫理を問う、芥川賞受賞第一作。
発売前から、ネット騒然!
絶賛・困惑・驚愕・恐怖の声、続々!
〇ずるずると引き摺られていくのに読む手が止まらない。悪夢そのものみたいだ。(カツセマサヒコ)
〇おもしろくて白目をむいてる。まだまだ物語ってある。(岨手由貴子)
〇抑圧下の男らしさを描いた”血のかよわないまごころ小説”にして、ジャンル無用の危険な傑作。(鴻巣友季子)
APPLE BOOKSのレビュー
中編『改良』で衝撃のデビューを果たし、続く『破局』で芥川賞を受賞した遠野遥の受賞後第一作。度を越した即物的な表現がおかしみを生む独特の文体はそのままに、前作から文字数が大幅にアップした初長編だ。舞台は全寮制の学校。ここでは成績に応じてクラス分けがあるが、1日3回以上のオーガズムに達すると成績が上がりやすいとされており、生徒は学校側から支給されたポルノビデオを見て自慰にふけり、生徒間のセックスも奨励されている。翻訳部に属する私は、成績を上げるために演劇部の真夏とセックスをする関係にあるが、演劇部の部長から告白されたという真夏から、こういうのは今日で最後と告げられる。規律を重んじて模範的な生徒となり、上位クラスへの進級を目指す私。だが、この“教育”は本当に正しいのか。本作は“成績”の正体に驚く特殊設定の学園モノであり、無意味なルールを強いられる現代社会をデフォルメしたディストピア小説でもあるが、共感能力が欠如した人間による“思いやり”を描いた心理小説としても出色。翻訳、演劇や催眠、あるいはポルノビデオまで駆使して、本筋を離れた作中作へ導く悪夢のような構成も面白い。
カスタマーレビュー
より洗練された作品
著者3作品目にして、芥川賞受賞第一作。過分な期待がかけられ、作品に付けられた煽り文句とも相まって、読書前のハードルはかなり高かった。しかし見事、「そのようなハードルは元来存在していなかった」という具合に打ち砕かれた作品。ハードルを越えていくのではなく、それが置かれた道とは別路を行く様な作品だった。
主人公は2作目の「破局」と同様に、作者の意図によって丁寧に感情を取り除かれた、客観的な視点を持った人物である。ただ今作が前作と大きく異なるのはやはり設定である。超能力によって位を決められ、強い統制化を測る特殊な学園が舞台である。その学園では1日3回のオルガズムが推奨される。統制された生活の中に意図的に与えられたように見える性欲と、それに従う力、抗う力をディストピア的に描いた作品である。
著者の特徴としては、やはり平易な文章に独自のユーモラスな視点を加える不思議な文章である。それは今作でも健在であり、前作の「破局」にも増して洗練されている。殊に今作は、著者の意図的なものなのか、より不必要な文章が削られ、不必要に見える必要な文章が加えられている。
作品を生めば生むほどそれが面白くなる。これは著者の大きな魅力だと私は思う。彼の次作が確実に今作よりも面白くなると、私は確信している。次作を不安なくここまで期待させてくれる彼のような作家は、そこまでいないだろう。