新装版 一絃の琴
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2.3 • 3件の評価
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発行者による作品情報
直木賞受賞作。土佐藩の上士の娘・苗は、祖母・袖の嗜みであった一絃琴を5歳の時に初めて聴き、その深い音色に魅せられた。運命の師有伯と死別した後、結婚生活で一度は封印したものの、夫の理解を得て市橋塾を始め、隆盛を極めた。その弟子となった蘭子は苗との確執の果て、一絃琴の伝統を昭和に伝える(講談社文庫)。
APPLE BOOKSのレビュー
第80回(1978年下半期)直木賞受賞作。幕末から昭和にかけて、時代に翻弄されながらも、一絃琴に人生をささげた女性2人の、情熱と情念の込もった芸道小説。後にドラマ化もされ、初版後30年を経て生まれ変わった新装版だが、一貫して女性を描いてきた著者らしく、女性の社会進出が進んだ現代でも共感するところが多い。一絃琴とは、木製の胴に細い弦を1本だけ張り、左手で弦を押さえて長さを調節し、右手で弦をはじくことでさまざまな音色を生み出す素朴な楽器。そんな一絃琴と、真っすぐで、頑なで不器用な主人公たちの人生が重なって見える。著者の出身地でもある高知を舞台に、一途に芸の道に進みながら、嫉妬と葛藤に狂っていく女性の複雑な心情が淡々とつづられている。著者の作品には歴史上の人物を題材とした作品も多いが、本作は実在の人物をモデルとしたフィクション。ただ、直接的、間接的に登場する歴史上の人物、入念な取材に基づいた一絃琴の歴史などが、主人公たちの生きた激動の時代にリアリティを与える。