方丈記 方丈記

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「方丈記(はうぢやうき)」

鴨長明(かもの ちょうめい、1155(久寿2)年〜1216(建保4)年)が鎌倉時代初期に書いた随筆です。
「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず」の書出しで、世の無常を述べて有名です。
兼好法師の「徒然草」、清少納言の「枕草子」と並んで、日本三大随筆の一つとされます。

本文を1冊の電子書籍にしました。
旧字旧仮名で総ルビです。
訳や注釈はありません。
本文は過剰なくらい漢字表記に直していますが、ふりがな付きなので読めます。かえって注釈なしで意味は取りやすいかもしれません。

全部で1万字足らず、400字詰め原稿用紙20枚くらいの短いものです。
前半には、自身が経験した平安時代末期の5つの災害が生々しく描かれます。
1177(安元3)年、大火
1180(治承4)年、竜巻、大風
1180(治承4)年、福原京遷都
1181(養和1)年、飢饉、疫病
1185(元暦2)年、大地震
後半は、自身の人生を振返り、愛する今の生活と心情が、美しい自然描写と共に述べられます。
名調子ですが、ワンルームで孤独に暮す五十男の考えの深まり、と言うと、なんだか急に。
そして、最後にちゃぶ台返し。

佐藤春夫の現代語訳や、夏目漱石の英訳もあります。よければ。

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我(わ)が身(み)、父方(ちゝかた)の祖母(おほば)の家(いへ)を傳(つた)へて、久(ひさ)しく彼(か)の處(ところ)に住(す)む。其(そ)の後(のち)縁缺(えんか)け、身衰(みおとろ)へて、忍(しの)ぶ方々(かた〴〵)繁(しげ)かりしかば、遂(つひ)に跡留(あととむ)る事(こと)を得(え)ずして、三十餘(みそぢあまり)にして、更(さら)に我(わ)が心(こゝろ)と、一(ひと)つの庵(いほり)を結(むす)ぶ。是(こ)れを、在(あ)りし住處(すまひ)に準(なずら)ふるに、十分(じふぶ)が一(いち)なり。唯(た)だ居屋(ゐや)ばかりを構(かま)へて、はか〴〵しくは屋(や)を造(つく)るに及(およ)ばず。僅(わづか)に築地(ついひぢ)を著(つ)けりと云(い)へども、門(もん)立(た)つる方便(たづき)無(な)し。竹(たけ)を柱(はしら)と爲(し)て、車宿(くるまやどり)と爲(せ)り。雪降(ゆきふ)り風吹(かぜふ)く每(ごと)に、危(あやふ)からずしも有(あ)らず。處(ところ)は河原(かはら)近(ちか)ければ、水(みづ)の難(なん)も深(ふか)く、白波(しらなみ)の恐(おそれ)も騒(さわ)がし。總(すべ)て有(あ)らぬ世(よ)を念(ねん)じ過(すぐ)しつゝ、心(こゝろ)を惱(なやま)せる事(こと)は、三十餘年(さんじふよねん)なり。其(そ)の間(あひだ)、折々(をり〳〵)の違目(たがひめ)に、自(おのづか)ら短(みじか)き運(うん)を悟(さと)りぬ。卽(すなは)ち五十(いそぢ)の春(はる)を迎(むか)へて、家(いへ)を出(い)で世(よ)を背(そむ)けり。本(もと)より妻子(さいし)無(な)ければ、捨(す)て難(がた)き寄縋(よすが)も無(な)し。身(み)に官祿(くわんろく)有(あ)らず、何(なに)に付(つ)けてか執(しふ)を留(とゞ)めむ。空(むな)しく大原山(おほはらやま)の雲(くも)に臥(ふ)して、亦(ま)た幾若干(いくそばく)の春秋(はるあき)をなむ經(へ)にける。
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*目次*
├方丈記
└底本などに関する情報

GENRE
Fiction & Literature
RELEASED
2025
August 20
LANGUAGE
JA
Japanese
LENGTH
24
Pages
PUBLISHER
犬井
SELLER
Umemura Toshiaki
SIZE
251.3
KB
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