晴れ、時々くらげを呼ぶ
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4.5 • 4件の評価
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- ¥800
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発行者による作品情報
彼女と出会った。僕の日常は変わった。
純度100%! 小説現代長編新人賞受賞作。
売れない作家だった父が病死してから、越前亨は日々をぼんやり生きてきた。亨は、最後まで家族に迷惑をかけながら死んだ父親のある言葉に、ずっと囚われている。
図書委員になった彼は、後輩の小崎優子と出会う。彼女は毎日、屋上でくらげ乞いをしている。雨乞いのように両手を広げて空を仰いで、「くらげよ、降ってこい!」と叫んでいるのだ。いわゆる、不思議ちゃんである。
くらげを呼ぶために奮闘する彼女を冷めた目で見ていた亨だったが、いつしか自分が彼女に興味を抱いていることに気づく。
自分の力ではどうにもできないことで溢れている世界への反抗。本への愛。父への本当の想いと、仲間たちへの友情。青春のきらきらがすべて詰まった一作。
APPLE BOOKSのレビュー
1998年生まれ、現役大学生の著者、鯨井あめが、とある高校生の日常をみずみずしく描いた青春小説『晴れ、時々くらげを呼ぶ』。主人公はいつもどこか冷めている高校2年生の越前亨。部活にも入らず、図書委員として淡々とした毎日を送っている彼は、同じく図書委員の後輩で「くらげを降らせて世の中に迷惑をかけたい」と語る小崎優子の“くらげ乞い”する姿を冷めた目で見ていた。ところがある日、彼らの住む町の上空からくらげが降ってきてから、亨の心にも少しずつ変化が表れ始める…。物語の設定は非常にファンタジックなのだが、登場人物たちの心情が丁寧かつリアルにつづられており、読み進めていくうちに不思議とその情景が手に取るように浮かんでくる。若い感性によって描写された思春期ならではのすがすがしさやもどかしさには、かつて十代だった人も懐かしさを感じることだろう。作中の高校生たちの会話にはさまざまな本のタイトルや引用が登場し、時に彼らの気持ちを代弁するツールにもなっており、著者の本への愛情が随所に感じられる。