最果ての泥徒
-
- ¥2,400
-
- ¥2,400
発行者による作品情報
20世紀初頭。泥徒(ゴーレム)が産業として躍進する世界。欧州の小国で、泥徒創造者の名家に育ったマヤは、若くして自らの泥徒を錬成する。しかし、ある惨劇により、一家に代々伝わる「原初の礎版」を喪失。行方を晦ます三人の愛弟子を追い、マヤと泥徒の世界全土を股にかけた、壮大かつ無謀な追走劇が始まるのだが――。
APPLE BOOKSのレビュー
『約束の果て―黒と紫の国―』が話題となった高丘哲次の第2作。舞台は20世紀初頭、人造人間である泥徒(ゴーレム)が産業として躍進する世界。泥徒創造者である尖筆師の名家に育ったマヤの父が殺害され、一族に伝わる秘宝であり泥徒を“完全なる被造物”にするための「原初の礎版」が奪われる。行方をくらませた父の3人の愛弟子たちを追い、マヤと彼女が創り出した泥徒“スタルィ”は、彼らを追って世界へと旅立つ。日露戦争などの史実に架空の要素を導入した歴史改変SFという枠組みの中で、ファンタジーの翼を縦横に羽ばたかせた、めくるめく冒険譚。カバラや魔術、錬金術などのオカルティズムをテクノロジーのベースとする泥徒の存在がユニークで、その泥徒を現代の人型ロボットやAIに置き換えてみれば、筆者が物語に込めた意図が見えてきそうだ。そして、泥徒(ロボット)が人間に近づくよりも人間が泥徒に近づくことの恐ろしさは、安価な労働力として人間を使い捨てる資本家の醜悪な姿を浮き彫りにする。人間を人間たらしめるものは何かという深遠なテーマも盛り込んだ、読み応えのある大作。