



木になった亜沙
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5.0 • 1件の評価
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- ¥680
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発行者による作品情報
奇妙で、不穏で、とびきり純粋な愛の物語
無垢で切実な願いが日常をいびつに変容させる。今村夏子の世界が炸裂する3篇に、単行本未収録エッセイと村田沙耶香による解説を付す。
※この電子書籍は2020年4月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
淡々とした語り口で奇譚な物語世界へと誘う人気女性作家、今村夏子による短編集。第161回芥川賞に輝いた『むらさきのスカートの女』に続く今作に収録された3つの物語にも、不穏な今村ワールドが広がっている。表題作「木になった亜沙」は、なぜか誰も自分の手渡した食べ物を食べてくれないという宿命に苦悩し、杉の木に転生した女性が主人公。「的になった七未」もまた、奇妙な宿命に翻弄される女性の生涯を描いている。ユニークな設定と女性主人公の目線で進むストーリーは、今作を締めくくる「ある夜の思い出」にも貫かれている。独創的で奇想天外なストーリーであるものの、決してドラマティックになり過ぎることはなく、どこか現実と地続きのような感覚を覚える。不思議な静けさがたちこめる彼女たちの心の声や葛藤が、読者を一気に今村の創り上げる作品世界へと引き込んでいく。