



極楽征夷大将軍
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4.2 • 39件の評価
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- ¥2,200
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発行者による作品情報
史上最も無能な征夷大将軍
やる気なし
使命感なし
執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?
動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。
足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。
一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。
後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。
怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。
混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、
何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。
APPLE BOOKSのレビュー
第169回(2023年上半期)直木賞受賞作 - 鎌倉時代の終焉(しゅうえん)から室町時代の誕生まで、『太平記』の世界を新たな視点で描いた第169回直木賞受賞作。源氏の嫡流が途絶え、執権の北条氏が独裁を行う鎌倉幕府にあって、源氏の名門でありながら家名の存続だけに腐心してきた足利家。庶子という立場から「極楽殿」と呼ばれ軽んじられて育った尊氏は、天真らんまんでおおらかな若者に成長し、突如、足利宗家当主の座に就く。ひょうひょうとしながらも大器の片りんを見せる尊氏、才気にあふれ政戦両略で頼りになる弟の直義、足利家の家宰として幕府樹立の功労者となる高師直。時に反目し合いながらも共に歩む3人の人間像を描き、読み手が没入しやすい物語として奥行きを与えている。さらに、後醍醐天皇、新田義貞、楠木正成など、やがては尊氏と敵対する人物もしっかり描く歴史群像劇。やる気なし、使命感なし、執着なしの足利尊氏が、なぜ天下を取ることになったのか。ミステリーや冒険活劇のみならず、歴史小説でも才能を発揮し、応仁の乱を描いた『室町無頼』で直木賞候補となった作者が、室町幕府を開いた初代将軍の実像に迫る。