死者は嘘をつかない
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- ¥1,600
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発行者による作品情報
作家デビュー50周年記念刊行、文庫オリジナル長篇!
この小説は、「ぼく」ことジェイミーの回想記であり、そしてこれはホラーストーリーだ。
そう、だってぼくには死者が見える――。
「死人の霊が見える」という、古典的とさえ言える設定。
それがキング流に調理されると、他の何者とも違うユニークな物語が立ち上がる。
ジェイミー少年は、ものごころついた頃から死者が見えていた。死者の世界にはいくつかの決まりがあるようだった。
死者は死ぬとすぐ、死を迎えた場所の近くに、死んだときの姿で現れる。
長くても数日で、だんだん薄れていって消える。
普通の生者にはぼんやり存在が感知される程度だが、ジェイミーだけは会話を交わせる。
そして、死者は嘘をつけない。
文芸エージェントの母。若年性認知症を発症した伯父。
母の親友のタフな女性刑事。同じアパートの引退した名誉教授。
母のクライアントの売れっ子作家。警察をあざ笑う連続爆弾魔……。
ジェイミーはその能力ゆえに周囲の人々の思惑にたびたび振り回され、奇妙な目にあいながら、どうにか成長していく。
しかしある事件をきっかけに、いよいよ奇怪な事象が彼本人の身に降りかかってくるのだった――。
少年の成長物語を書かせれば天下一品、そして言わずもがなのホラーの帝王が、両者を組み合わせた「青春ホラーストーリー」。これが面白くないはずがない。
最後の最後まで驚きを仕込んできて読者を油断させてくれず、自身の代表作のある「ネタ」をからめてくるファンサービスも怠りなし。
どこを切ってもキングという円熟の筆で心おきなく楽しませてくれる、記念刊行にふさわしい逸品!
APPLE BOOKSのレビュー
ミステリーを意識した作品にも多くの傑作が生まれている近年のスティーヴン・キング。本作ではホラーとミステリーが不可分になった、希代のストーリーテラーの語り口を存分に味わえる。主人公の少年ジェイミーは死者の姿が見え、彼らと会話できる能力を持つ。文芸エージェントである母のティアは、急死した売れっ子作家トーマスの遺作を完成させるため、死んだ彼から小説の中身を聞き出すようジェイミーに頼むのだが…。「ぼく」ことジェイミーの回想記として語られる本作は、キングの魅力を分かりやすく詰め込んだめくるめく一冊。「死人の姿が見える」という設定は決して目新しいものではないが、キングの手に掛かるとひと味違うスーパーナチュラルなミステリーに仕上がる。「死者は嘘をつけない」というルールの設定が、サスペンスをより際立たせているのも特徴だ。中盤から展開される、爆弾魔との邂逅(かいこう)を通して描かれる悪との戦いもスリリングだが、本作はジェイミーの成長譚という側面もあり、そのみずみずしい筆致も魅力の一つだ。キングの作品は上下巻の圧倒的ボリュームで知られるが、本作は300ページ超のコンパクトさで、キング初心者にもうってつけの一冊。