比ぶ者なき
-
- ¥880
-
- ¥880
発行者による作品情報
彼の名は藤原不比等。自らの野望のために一三〇〇年の間、日本人を欺き続けた男――。ノワール小説の旗手が放つ、衝撃の古代歴史巨編
万世一系、天孫降臨、聖徳太子――すべてはこの男がつくり出した。藤原史(のちの不比等)が胸に秘めた野望、それは「日本書紀」という名の神話を創り上げ、天皇を神にすること。そして自らも神の一族となることで、永遠の繁栄を手にすることであった。古代史に隠された闇を抉り出す会心作。
APPLE BOOKSのレビュー
古代大和朝廷において、権力の頂点を目指した男の生涯を描く歴史大河。天武天皇に冷遇されてきた藤原史(ふひと、後の不比等)が、皇位継承争いに乗じて頭角を現し、皇統の正統性を高めるために「日本書紀」を創作。律令による統治体制を固め、やがては自身の娘を皇后とし都まで造営する。日本古来の伝統と考えられてきた価値観の数々を、根本から創り出した藤原不比等は、まさに“比ぶ者なき”存在といえる。古代日本を舞台とした歴史小説は多くないが、直木賞作家の著者による大胆な歴史解釈と自由な筆致は、史料の少ない時代の描写に大いなるリアリティを与えている。著者が得意とするノワール小説の主人公のような善と悪の両面を併せ持つ不比等、持統天皇との駆け引き、長屋王との権力争い、聖徳太子の誕生、県犬養三千代とのロマンスなどが描かれ、教科書に登場するような歴史的人物に新たな生命が吹き込まれる。荒唐無稽な創作小説とはいえ、古代日本の魅力を再発見させてくれる、スケールの大きな痛快エンターテインメント。