永遠の森 博物館惑星
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4.3 • 3件の評価
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- ¥950
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発行者による作品情報
〔日本推理作家協会賞受賞作〕全世界の芸術品が収められた衛星軌道上の巨大博物館〈アフロディーテ〉。そこでは、データベース・コンピュータに直接接続した学芸員たちが、日々搬入されるいわく付きの物品に対処するなかで、芸術にこめられた人びとの想いに触れていた。切なさの名手が描く美をめぐる9つの物語
APPLE BOOKSのレビュー
京都生まれの菅浩江が、美と芸術の意義を追究した連作SF短編集「永遠の森 博物館惑星」。人類が手に入れられる限りの芸術品や動植物を集めた巨大博物館「アフロディーテ」。そこは地球の衛星軌道上に浮かぶ小惑星であり、脳外科手術を受けた学芸員たちはコンピュータ上のデータベースに直接接続し、所蔵品の分析や研究を行なっている。音楽、美術、動植物の部門間調整を担う総合管轄部署の田代孝弘は、厄介な仕事を引き受けてくる上司に振り回されながらも、一見価値がなさそうな絵画や人形の秘密を解き明かす。あらゆるデータベースの情報から理性で芸術に対峙する主人公と、素直な感性で美に接する妻の美和子。各編に少しずつ散りばめられたピアノを巡る物語が、作品に一貫性をもたらしながら最終話へといざなう。全編を通すとラブストーリーとしても読める巧みな構成が光る。人間にとって芸術とは何なのか、という大きなテーマをロマンあふれる世界観で描き、2000年の発表と同時に国内20世紀SFの最後を飾った美しい連作集。