



沖で待つ
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2.7 • 9件の評価
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- ¥500
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発行者による作品情報
第134回芥川賞受賞作。待望の電子化!
仕事のことだったら、そいつのために何だってしてやる。そう思っていた同期の太っちゃんが死んだ。約束を果たすため、私は太っちゃんの部屋にしのびこむ。仕事を通して結ばれた男女の信頼と友情を描く芥川賞受賞作。待望の電子化。「勤労感謝の日」「みなみのしまのぶんたろう」併録。
APPLE BOOKSのレビュー
第134回(2005年下半期)芥川賞受賞作。仕事を通して生まれた男女の信頼と友情を描いた受賞作「沖で待つ」の他、「勤労感謝の日」、単行本未収録の短編「みなみのしまのぶんたろう」を併録。「沖で待つ」は、住宅設備機器メーカーで働く同期の太っちゃんと「私」の物語。どちらかが死んだ時、相手のパソコンのHDDを壊して人に知られたくない秘密を守るという約束を果たすため私が動き出す。良好な関係性を保ちつつ決して恋愛に発展しない独特な距離感が、人物描写の確かさと上質なユーモアによって魅力的に描かれている。働く人間のメンタリティや営業職の現場のリアリティが相乗効果を生み、作品を生き生きとしたものにしている点も特筆したい。「勤労感謝の日」は父親の通夜で母親にセクハラをした上司に殴りかかり、会社を辞めざるを得なくなった36歳の女性が主人公。孤独を抱えた中年女性の悲喜こもごもが吐露されるが、ほろりとさせる現代版市井ものといった趣もある。「みなみのしまのぶんたろう」はひらがなとカタカナで書かれた、シニカルでいて爽やかなファンタジー。いずれも軽快な文章でサラリと読ませながら、読後に温かく快い余韻が残る。