



海岸通り
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5.0 • 1件の評価
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- ¥1,500
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発行者による作品情報
【第171回芥川賞候補作】
踊る、それがわたしたちの自由
海辺の老人ホームに集う女たちのゆるやかなつながり。
いま最も注目される新鋭の最新作。
「これってフツー?」
「わたしの中じゃね」
「クズミさんのフツー、ちょっとヘン」(本文より)
海辺の老人ホーム「雲母園」で派遣の清掃員として働くわたし、クズミ。
ウガンダから来た同僚マリアさん。
サボりぐせのある元同僚の神崎さん。
ニセモノのバス停で来ないバスを毎日待っている入居者のサトウさん。
さまざまな人物が、正しさとまちがい、本物とニセモノの境をこえて踊る、静かな物語。
APPLE BOOKSのレビュー
新鋭の実力派作家、坂崎かおるが移民や貧困といった現代的なテーマを淡々とした筆致で描くヒューマンドラマ。海辺の老人ホームに設置されている「ニセモノ」のバス停で、入居者のサトウさんはいつまでも来ないバスを待つ。派遣の清掃員として働くクズミは、認知症が進むサトウさんから嫁の「ナギサさん」に間違われながら、日々「ニセモノ」としての役割をこなしていた。そんなある日、ウガンダから来たマリアさんが新人清掃員としてやってくる。サポート役に任命されたクズミは、戸惑いながらもマリアさんと親交を深めていく。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で解雇され、家賃の滞納でアパートを追い出されてしまうクズミ。それを知ったマリアさんは、ウガンダ人たちが住む家に来るように彼女を誘うのだった。人付き合いは最小限にして、余計な欲望も趣味も持たず、安い賃金でぎりぎりの生活を送るクズミの生き方は、絶望や怒りではなく「諦め」という言葉が似合う。そんな彼女がマリアさんやサトウさんとのつながりによって、ゆっくりと、しかし確実に変わっていく姿は感動的だ。現代の日本が抱える問題を知るためにも読むべき作品だといえるだろう。