炎の経営者(上)
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発行者による作品情報
山陽線下り急行「筑紫」の2等車で、一中小企業「日本触媒化学工業」社長の八谷泰造は、当時富士製鉄社長だった永野重雄に面会を申し込んだ。終戦直後の金で3千万円の株を、持ってもらいたいというのである――。無水フタール酸の製造から石油化学全般に命を懸けたロマン溢れる男の人生長編ドラマ。
APPLE BOOKSのレビュー
元業界紙記者ならではの綿密な取材をもとに、経済やビジネスの世界を徹底したリアリティで活写する、高杉良の「炎の経営者(上)」。戦中戦後を生きた日本触媒化学工業(現・日本触媒)の2代目社長で、その情熱的なスタイルにより"炎の経営者"と呼ばれていた八谷泰造の半生を描く。大企業の社長に寝台列車の中で出資の直談判をしたり、名刺を先に作って入社を迷う技術者を口説き落とすなど、破天荒な行動と奇策で困難を乗り越えていくエピソードの数々が刺激的。社運を左右する危機に際しても冷静な判断を下し、ときには駆け引きなしでまっすぐ想いをぶつけ交渉に臨む。頭脳明晰かつ実直なリーダーとして魅力的に描き出される、八谷の人間性にも注目したい。名もなき企業の経営者に過ぎなかった彼が、やがて政界をも巻き込んで大事業を成し遂げていくダイナミックな物語は、業界への知識がなくとも大いに心引かれる。下巻とあわせて、八谷が取り組んだ仕事の全体像に触れてもらいたい。