炎熱商人(上)
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4.2 • 5件の評価
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発行者による作品情報
中堅商社のマニラ事務所長小寺は本社の要請で未経験のラワン材取引きに手を染めた。しかし現地の人々との信頼の上にビジネスを進めようとする彼の前に、厳しい現実が次々とたちはだかってくる……。炎熱の地で困難な国際ビジネスに情熱を燃やす男たち。しかもそこは戦争の傷跡を色濃く残す地であった。第二次大戦当時の日本軍とフィリッピン人との関わり合いを一方に、現代の国際商戦をもう一方に置いて語る巧みな展開と、壮大なスケールで描きあげられた直木賞受賞作品。
APPLE BOOKSのレビュー
第87回(1982年上半期)直木賞受賞作。戦後経済成長期のフィリピンを舞台に、日本人商社パーソンたちの奮闘と、日本駐在軍が戦争の傷跡を残した地の歴史と相互理解の困難を描いた壮大な経済小説『炎熱商人』。フィリッピンから木材を輸入するために、取引先である鴻田貿易のマニラ事務所に派遣された荒川ベニヤの若手社員の石山、そして現地事務所で木材取引マネージャーとして働く、日本とフィリッピンの両親を持つフランク・佐藤・ベンジャミンの視点を通して描かれる。炎熱の地で、材木輸入のために現地の人々への信頼を得ながら奔走する商社パーソンたちの物語と、第二次世界大戦中に日本軍の通訳として働いていたフランクの回想が織り交ぜられ、現在と過去を相互に描くことで物語に深みをもたらしている。日本軍によるフィリッピン人への残酷な仕打ちや殺りくの現場に苦しみ、一方でフィリッピン人を尊重し、共存しようとしていた憲兵隊の馬場中尉という存在に救われてきたフランクの記憶は、史実に基づいた生々しさがある。複雑な歴史背景のある国で、それぞれの国の人々がさまざまな思いを抱きながら商戦を繰り広げる人間ドラマが胸に迫る。