熊はどこにいるの
-
- ¥1,900
-
- ¥1,900
発行者による作品情報
「わたし、殺しました、生みたての赤ちゃんを」──震災から7年の地で、身元不明の幼子をめぐり、4人の女たちの運命が、いま、動き出す。各紙誌絶賛! デビュー18年、著者最高傑作。
「これほどの強度の小説は滅多にないし、ここには真の意味での熊がいる。」──古川日出男
「いつかこんな夢の中に自分もいたような気がする。止まらない余震のような小説。」──斎藤真理子
生きるためにもがく者、
死ぬための場所を探す者──
暴力から逃れた女を匿う山奥の家に暮らす、リツとアイ。
津波ですべてを失ったサキと、災後の移住者であるヒロ。
震災から7年の地で、身元不明の幼子をめぐり、4人の女たちの運命が、いま、動き出す。
APPLE BOOKSのレビュー
4人の女性の人生が複雑に交錯する中で、生と死の葛藤が浮かび上がる一作。作者の木村紅美は『あなたに安全な人』に引き続き、本作でも震災を物語の背景として用い、仙台市で育ち、盛岡市に暮らした自身のリアリティを投影している。物語は、ショッピングモールで身元不明の男児が保護されたニュースから始まる。山奥の家で捨て子の赤ん坊を育てていたリツとアイ、津波ですべてを失ったサキと移住者のヒロの4人の関係は、男児の存在を介して徐々に変容していくのだった。山奥のシェルターに暮らす女性たちにとって、“熊”とはかつて自分を加害した者のメタファーである。しかし、彼女たちは時として自らも加害者となり、“熊”を巡る視点は容易に逆転する。傷つきながら自分も誰かを傷つけてしまうジレンマ。表裏一体の慈しみとエゴ。ここには生温かな救いや、登場人物へのシンパシーを促す容易なルートは用意されていない。“熊”はどこにいるのか。読み進めるほどに、その問いかけの重みがずしりと胸にのしかかってくる物語だ。