生命のからくり
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5.0 • 2件の評価
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- ¥880
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発行者による作品情報
現在の地球に存在する多様な生き物たちは、単純な化合物から進化してきたと考えられている。「生命」が単なる物質から決別し、その脈打つ「鼓動」を得たのは、どんな出来事が転換点となったのだろうか? 本書では、最近の生命科学の進展から得られた数々の知見を通じて、生命の根源的な性質を「自己情報の保存とその変革」という二つの要素と捉える。これらが悠久の時を経て織りなす「生命」という現象の「からくり」に迫る。(講談社現代新書)
カスタマーレビュー
生物がもつ根源的な矛盾である「情報の保存と変革」
1967年に発見された「岡崎フラグメント」。私は、何十年もの間なぜそのような機構を生命がとったのか、どうしてもわからなかった。
それが「自己の保存と変革」という相矛盾したベクトルを解決できるのが「岡崎フラグメント」であることとは!
実際「岡崎フラグメント」の意義が理解不能だった私のようなものでも納得できる論述である。
本著は、多方面からのエビデンスをもって、論理的に論述している。
しかも、丁寧な語り口でこちらが理解できるまで理詰めで論点を進めてくれる。
まるで難しい内容の講義のつまずきを懇切丁寧にわかるまで、緻密に論理を積み上げているような印象を受け大変わかりやすい。まるで「生命のからくり」講義を実際に受けているようである。
まえがきでは葛藤、第1章では登山、第2章では天平写経、第3章ではベット法、第4章では旅の話、第5章では結晶の話、第6章はスティーブ・ジョブズから、終章では古代中国の二元論から、それぞれ話の論点に入る方法は、筆者の人間としての広さを感じ取ることができるとともに、読者としては章につながる興味関心を盛り上げてくれて、大変楽しく意欲的に拝読できた。
ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)が発明されたのが、つい1985年。シンクロトロン放射光のX線を利用した構造解析はなんと20世紀後半であることを考えれば、後書きに「機会があれば、適宜、加筆訂正や引用の追加を行いたいと思っている」とあるように、ハード面やソフト面の技術的進歩や発見があれば、ぜひ「生命のからくり 改訂2版」として出版して欲しいものである。
講談社現代新書はどれも質が高い。その中でも、しっかりと査読を受けて誕生した本書は、一般読者向けの語り口だが、内容は専門書に引けを取らない良書と言える。