生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像
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4.3 • 3件の評価
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発行者による作品情報
「生命の起源」は誰でも一度は抱く疑問で、その謎への挑戦は科学ロマンの一つである。粘土鉱物の専門家である著者は、生命の源となる分子の誕生には、地球に大量に飛来した隕石が深く関わっており、しかも、それは海中ではなく、地中の奥底深くで行われた可能性が高いという。「生命はなぜ生まれ、なぜ進化し続けるのか?」。きわめて原初的な問いかけに対して、科学的に明晰に答えたエキサイティングな作品。(講談社現代新書)
カスタマーレビュー
「前生物的分子進化」
物理的、地球史必然としての生命起源説
無機物から生物有機分子が生じ生命が誕生するまでの分野は、最難問でありいくつかの生物学や生命科学の著作でも、軽く旧態依然の触れ方しかなされていないものが多い。
また、侃侃諤諤と議論百出し、百家争鳴している印象で、いろんな◯◯ワールド説が唱えられている現状、筆者はまさに一刀両断の如く「物理的、地球史的必然としての生命起源説」「有機分子ビック・バン説」を多数のエビデンスと実証実験などで、日常当たり前の物理的必然性と地球史的合理性に基づいて丁寧に論じているため非常にわかりやすい。
しかも、一般読者に興味関心を持ってもらうため、章ごとに筆者の論点がまとめられており、詳しい合理的な例えや語りかけているような文体も筆者の意図が感じられる。
それにしても、地質学や化学、物理学を駆使して先カンブリア時代(冥王代から太古代)の地球環境を、プルームテクトニクスの現象で遡り、また、熱力学第一法則と第二法則のなかで、エントロピーの矛盾を解き明かし「生命の発生と生物進化は、地球のエントロピーの減少に応じた地球軽元素の秩序化である」と看破した。
「なぜ地球に生命が発生して進化したのか」の難問に「進化の物理的必然性を考察して、地球の熱の放出によるエントロピーの減少が原因である」と説得力を持って断言している。
隕石の後期重爆撃によって、40億~38億年前頃、”局地的„“一時的„に還元大気が生じ、超高温の”衝撃後蒸気流„の中で一気に水素過剰の還元状態になったことで大量の有機分子がつくられたのも地球史的化学的必然なのだろう。
地球誕生時の太陽からの位置や火星の外側からの隕石が海洋に衝突したことも、地下で生命が発生したことも地球史のうえでは、生命誕生には必然だったのだろう。
ただ、月の影響には触れられていないがどうなのだろう?
生命は40億〜38億年前から連綿と続いている。私の命も壮大な時間の流れによって必然に生まれたのだ。
新しい知見や発見があれば、是非とも続編を期待したい。