神獣夢望伝
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- ¥1,900
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発行者による作品情報
くり返し見る夢の景色を探して旅立つ少年、恋人を取り戻そうと村を出奔する青年、一度は愛した男に裏切られた女、政争と権謀術数の渦に巻き込まれる人々――不条理な運命に翻弄され抗う先に救いはあるのか。キャラクターの濃さとストーリーの構成力を選考委員から絶賛された、日本ファンタジーノベル大賞2023受賞作。
APPLE BOOKSのレビュー
緻密に練られた世界観で高い評価を得た中華幻想譚。物語の舞台は、地底湖に眠る神獣が微睡(まどろ)む夢だとされる世界。世界の崩壊を防ぐため、神獣の安らかな眠りを祈願する神獣信仰の中心地である耀(よう)の国では神官が政治と信仰をつかさどっているが、同じく神獣信仰を持つ周辺国とは争いが絶えなかった。ある日、耀の東の外れにある辺ぴな村・楽嘉村(らくかそん)に、国の頂点に立つ太上神官が訪れたことから、運命の歯車が村の若者たちを巻き込んで回り出す。繰り返し見る不思議な夢を追い求めるため、神官となることを決意する少年。夫婦となる約束をしながらも、太上神官によって引き裂かれてしまう恋人たち。いかに周辺国からの攻撃を受けようとも専守防衛に徹するという太上神官の強い意志が新たな紛争を誘発し、そこに巻き込まれた若者たちの行動が思いもよらぬ結末を引き寄せてしまう。登場人物たちの多彩なキャラクターと緻密に構成されたストーリーは、これが作者のデビュー作だとは思えないほど。“夢”のはかなさがほろ苦い余韻を残す。