福島モノローグ
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3.0 • 2件の評価
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
忘れたいことがある。忘れられないことがある――福島から語られる「いま」の声は、死者の声を響かせながら、未来へと向かう。『想像ラジオ』の著者による、21世紀の『苦海浄土』。
APPLE BOOKSのレビュー
東日本大震災から10年。震災で生活が一変した女性たちの言葉に耳を傾けた、作家いとうせいこうによる“声”のノンフィクション文学。震災から2年後に発表された小説『想像ラジオ』と対を成す作品ともいえるだろう。東京電力福島第一原発事故の帰還困難区域で生き残った牛を放牧する女性、一度は放射能を恐れて県外に避難したが、再び福島に戻って子供を育てている母親たち、避難所で臨時災害FMを立ち上げた女性、そして、ある女性が体験した、行方不明の父親の死を知らせる不思議な出来事…。全部で8つのエピソードが語られるが、報道やニュースでは知ることのできなかったリアルな姿が「声」を通して見えてくる。震災からこれまでに、さまざまな思いを抱えながら、それぞれがそれぞれの人生を生きている。津波で犠牲になった男がラジオDJとして死者の声を伝えた『想像ラジオ』とは違い、作者の声は徹底的に省かれ、「聞き書き」のスタイルで一人語りがありのままにつづられている。そしてそれは、震災の当事者でない作者が改めて福島と向き合うための方法だったに違いない。忘れてはいけない、そんな意志が伝わってくる意味でも、石牟礼道子の『苦海浄土 わが水俣病』や村上春樹の『アンダーグラウンド』に比肩するノンフィクション。