童子軍鑑 1

APPLE BOOKSのレビュー

小田世里奈が描く「童子軍艦」は、ファンタジー世界に日本の戦国時代の兵法が登場する、異色の戦記ダークファンタジー。多数の種族が共存する世界で、優れた知能を持つ"小さな賢人"のノーム族のもとに生まれた主人公、フェイ。神聖帝国テネファニアは古文書の解読を条件にノームを守護し、彼らはその知識を帝国に与えていた。しかし、すべての古文書が解き明かされたその夜に、帝国はノームの虐殺を企てる。命からがら帝国から逃げたフェイは、古文書から得た膨大な知識を武器に、帝国への復讐を決意する。織田信長や島津家久といった戦国時代の武将を好むフェイは、当時の歴史や兵器に関する知識を駆使して、兵法が存在しない世界で恐るべき軍師ぶりを発揮していく。騎士団長の娘ナギをはじめとする登場キャラクターの繊細な描写と、重厚な戦略表現との対比も味わい深い作品。