絞首台の黙示録
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4.1 • 8件の評価
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- ¥880
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発行者による作品情報
長野県松本で暮らす作家のぼくは、連絡がとれない父・伊郷由史の安否を確認するため、新潟の実家へと戻った。生後3ヶ月で亡くなった双子の兄とぼくに、それぞれ〈文〉〈工〉と書いて同じタクミと読ませる名付けをした父。だが、実家で父の不在を確認したぼくは、タクミを名乗る自分そっくりな男の訪問を受ける。彼は育ての親を殺して死刑になってから、ここへ来たというのだが……神林長平、三十六年目の最新傑作にして、最大の野心作。
APPLE BOOKSのレビュー
「敵は海賊」「戦闘妖精・雪風」などのシリーズ作品で人気の神林長平は、1980年前後にデビューした "SF作家第三世代" を代表する作家。機械と人間、意識と言語、現実と非現実の関わり合いを追求した作品で知られる作家の本作「絞首台の黙示録」は、意識の容れ物としての人間とアイデンティティーについて考えさせられる作品。父の安否を確かめるために故郷に戻った作家の "ぼく" が実家の玄関先で鉢合わせたのは、父ではなく、同じ顔と同じ名前を持つ死刑執行されて死んだはずの男だった。自分が何者なのか記憶が曖昧だという男とぼくは記憶を蘇らせるため教誨師の "わたし" を訪ねる。死刑執行の重々しい描写から始まり、多視点で展開する物語の終着点は意外なほどに清々しい。