臨床瑣談 続
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発行者による作品情報
「かつては医学の治癒力はきわめて限られていた。したがって、経験を積んだ医師が、〈ぼつぼつ遠方の親戚の方を呼んで下さい〉というタイミングは驚くべきものがあったという。現在の医学はこのような予言が大幅に外れる程度には進歩している。しかし、診断と予後とを〈宣告〉するのは思い上がりであり、科学の名に背くとさえ思う。予後はもちろん、診断も仮説であり、仮説は宣告される種類のものではない」医学の可能性と限界をしるし、生活者と医療とのかかわりを懇切に描いた本書は、精神科医としての長年の経験から生まれた。しかし、そこにあるのは、指南的役割でも医の倫理の類いでもない。医師と生活者のあいだに立とうとする柔らかい姿勢である。「本書で取り上げた物語の中で、私は医師でもあるが、同時に家族や甥や義弟や友人や知人である。そして、医師といっても、主治医ではない場合が多い。患者と主治医との間にあって、何らかの役割を演じている。患者側に近い場合も多いが、単なる患者の親戚の医者というのとも少し違う。フィクサーというのか、橋渡し役というのか、一種の仲介者であることを期待される。しかし、このことは一つの分裂を生きることである。一般の人と医師団との間にある、一種のずれ、すれ違い、違和性、どこか相合わないもの――この違いはかなり深い」「認知症に手さぐりで接近する」「認知症の人からみた世界を覗いてみる」「血液型性格学を問われて性格というものを考える」「煙草との別れ、酒との別れ」「現代医学はひとつか」「中医学瞥見の記」「インフルエンザ雑感」の7章。