花魁さんと書道ガール
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- ¥650
発行者による作品情報
書道一筋の内気な大学生・多摩子は、祖母の部屋で古びた簪を見つけた夜、春風と名乗る花魁の幽霊に取り憑かれてしまう。「本物の恋を見ることができれば成仏するかもしれないよ」という幽霊の言葉を信じた多摩子は、春風に体を貸して恋に悩む人の相談にのり、花魁の巧みな手練手管で恋愛を成就させることに。かくして妖艶な花魁と地味な書道ガールによる「最強の恋愛アドバイザー」が誕生した。
APPLE BOOKSのレビュー
みずみずしい恋心をていねいに描き出し、人気を得ている瀬那和章。本作は江戸時代の花魁と現代の女子大生が恋の悩みを次々に解決していくという、奇想天外なラブファンタジー。主人公・花沢多摩子は、書道一筋。ほのかな恋よりも書道を優先させてしまう、ちょっと風変わりな女の子。対して春風は、吉原で数えきれないほど一夜限りの恋を経験してきた売れっ子の花魁。この対照的な2人が、多摩子の友人や書道部の先輩などの恋をいかに成就させていくかに注目。もちろん、解決するのは春風。吉原でも高位の花魁だけに人の心の機微を知り尽くしていて、気配りのきいたお膳立てと気っ風のいい言葉で、絡まった想いの糸をほぐしていく。まるで快刀乱麻のような恋愛指南には、"お見事"と声をかけたくなる。春風の決めゼリフは、誰でも大切にしておきたくなる名言ばかり。テンポの良いストーリー展開は痛快、かつ読後には温かい気持ちになる一冊。