



華竜の宮(上)
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4.4 • 12件の評価
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- ¥880
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発行者による作品情報
滅亡を前に、人類はどう生きるべきか?ベストSF2010第1位、日本SF大賞受賞新世代日本SFの金字塔、ついに電子書籍化。地殻変動で陸地がほぼ水没しても人類は武器を捨てなかった。さらなる絶望的な環境激変は、この星のすべての命に対して決断を迫る。
APPLE BOOKSのレビュー
短編「魚舟・獣舟」を嚆矢(こうし)とした共通の世界観を描く上田早夕里の終末海洋SF、オーシャンクロニクル・シリーズの長編第1作目「華竜の宮(上)」。マントルのホットプルームによる海底隆起で海面が260m上昇し、陸地の大半が水没した25世紀の地球。激変した環境に耐えるため、人類は2つのグループに分裂した。海上都市に居住し、「アシスタント知性体」というネットワーク上の仮想人格を利用した高度情報社会の恩恵を受ける"陸上民"と、遺伝子改変により「魚舟」と呼ばれる生物船と共に生涯を過ごす生態システムを確立し、過酷な洋上で生きる"海上民"。日本政府の外交官である青澄誠司はアジア海域での海上民との紛争を解決すべく、海上民の女性長・ツキソメと会談する。だが、地球にはさらなる環境激変の予兆が現れていた…。黙示録的な未来社会の描写や、異形の生物やアシスタント知性体といった超自然的な背景設定、権謀術数が渦巻く組織間の政治的争いなど、ディストピア、SF、冒険スパイといったジャンル小説の旨味を凝縮しつつ、そのどれにも収まらない筆力に脱帽。人間そして生命とは何か、という問いを投げかける下巻の面白さも保証済み。