虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ
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4.0 • 1件の評価
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- ¥3,600
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発行者による作品情報
虚言症が蔓延するアメリカで、稀代の嘘つき男が
仕掛ける奇想天外なロードトリップ――
ピュリッツァー賞候補作家が放つ長編小説、待望の全訳!
オブライエン(著)×村上春樹(訳)
ある理由で一流ジャーナリストからフェイクニュースの王に転落した中年男ボイド。
カリフォルニアの田舎町でデパートの店長をしている彼は地元銀行の窓口係アンジーに
銃をつきつけ、奪った8万1千ドルと彼女を連れ逃避行に出る。
仕切り屋で喋り通しのアンジーに閉口しつつアメリカを縦断するボイドと、
彼をとりまく大富豪、悪徳警官、美人妻、殺人者――追う者追われる者が入り乱れ、
嘘と疫病に乗って全米を疾走するが……。
ティム・オブライエン、20年ぶりの長編小説。
APPLE BOOKSのレビュー
ベトナム戦争に従軍し、その体験に基づく作品で知られるティム・オブライエン。20年ぶりの長編小説となる本作は、ベトナムを離れて、現代アメリカの闇と狂騒を描いたロードノベル。主人公のボイドは、人生を変えようと決心して銀行を襲う。行員のアンジーを人質に逃避行を続けるが、実はボイドが襲った銀行はいわく付きで、警察には被害届も出されていない。そんな中、奪われた金を取り返すべく悪徳警官、そしてボイドを痛めつけるべくアンジーのボーイフレンドが、それぞれ彼らを追跡する…。訳者はこれまでもオブライエンの翻訳を手掛けてきた村上春樹。村上も指摘している通り、本作はシリアスな喜劇仕立てだ。トランピズム批判を行いながら、SNSに象徴される“虚言”が蔓延(まんえん)する現代アメリカ社会を戯画化してみせる。しかし、虚言や嘘がまかり通るという意味では、日本にも同じ危機感を抱かずにはいられない。ストーリーは複雑で登場人物も多岐にわたるが、会話主体でストーリーは軽快に進む。多弁でしかも無駄のない会話劇はエルモア・レナードをほうふつとさせ、一流ジャーナリストから転落した虚言症のボイドと、喋り通しのアンジーの“バディもの”としても楽しめる。