蜩ノ記
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- ¥760
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発行者による作品情報
命を区切られたとき、人は何を思い、いかに生きるのか―。幽閉中の武士・戸田秋谷の気高く凄絶な覚悟と矜持を、九州豊後の穏やかな山間の風景の中に謳い上げる感涙の時代小説!平成23年度下半期・第146回直木賞受賞作!2014年、待望の映画化!
APPLE BOOKSのレビュー
第146回(2011年下半期)直木賞受賞作 - 一夏も生きられない蜩(ひぐらし)のように限りある命を、人はいかに悔いなく、そして誇り高く生きるべきか。そんな根元的な問いかけが読後に深く余韻を残す葉室麟の作品。舞台は江戸時代後期、九州のとある藩。かつて陰謀によって幽閉され、3年後の切腹を申し渡された戸田秋谷は、藩主の家譜の編さんをしながら残された日々を穏やかに過ごしている。監視役の檀野庄三郎は秋谷のその高潔な人柄に引かれ、彼を助けたいと思うようになるのだが…。死が迫り来てもなお慎ましく、己の信念を貫いて生きようとする秋谷と家族の姿に胸を打たれる。藩の内紛や陰謀をつまびらかにする重厚な時代小説の根底には、「武士の生き様とは死に様である」とする武士道の精神が存在する。そして、日本の奥ゆかしい美を感じさせる葉室のストーリーテリングは、その武士道や時代を超えて現代の私たちに静かに訴えかけるものがある。秋谷のように残された命の日数が決まっていないとしても、一日一日を大切に生きたいと願う気持ちは普遍的なものであるはずだ。2014年には役所広司と岡田准一の共演で映画化され、大きな話題を呼んだ。