記憶の対位法
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4.0 • 3件の評価
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- ¥2,400
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発行者による作品情報
二〇一七年、フランス中部に位置する都市リモージュの新聞社に勤める事件記者ジャンゴ・レノールトは、亡き祖父マルセルの遺品整理のため、彼が晩年を暮らした寒村を訪れる。戦後、対独協力者として断罪された祖父は、一族から距離を置いてこの地に隠れ住んでいた。生前会うことがなかった祖父が遺したのは古書の山と、二十あまりの黒檀の小箱──そこに隠された意味とは何か? ジャンゴは西洋古典学を研究する大学院生ゾエ・ブノワの協力のもと、祖父が希求した真実を求め歴史の迷宮へと足を踏み入れる。〈図書館の魔女〉シリーズの俊英が満を持して贈る、知的探究の喜びに満ちた長編ミステリ。
APPLE BOOKSのレビュー
ファンタジー巨編『図書館の魔女』シリーズの高田大介による長編ミステリー。ジャーナリストのジャン=バティスト(通称ジャンゴ)は、フランス中部の都市リモージュの地方紙の事件記者として働いている。ある日、長らく空き家のまま放置されていた亡き祖父の家の片付けに訪れたジャンゴは、そこで黒檀(こくたん)で作られた大量の寄木細工の箱を見つける。中には上下の縁がギザギザに切り取られ、不可解な文言が書かれた紙片が入っていた。第2次世界大戦下のコラボ(対独協力者)として糾弾され、粛清から逃れるために家族とも別れ、山間の離村に隠れ住んでいた祖父。彼はなぜ黒檀の箱を集めていたのか。西洋古典を専攻する大学院生ゾエの協力の下、ジャンゴは祖父が追い求めていた真実に迫る。タイトルになった「対位法」とは、複数の旋律をそれぞれの独立性を保ったまま調和させ重ね合わせる音楽技法のこと。自身の潔白の主張すらできずに追われた祖父、そしてジャーナリストとしてフランス社会の移民差別と戦いながらも、当の移民たちからは裏切り者扱いされているジャンゴ。家族、戦争、国、信仰、そして音楽。それぞれの記憶や歴史がまさしく対位法のように重なり合っていく。