超解読! はじめてのフッサール『現象学の理念』 超解読! はじめてのフッサール『現象学の理念』

超解読! はじめてのフッサール『現象学の理念‪』‬

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発行者による作品情報

主観と客観の一致は原理的にありえない。
近代の哲学者たちを悩ませてきた「認識問題」の難問を解くために
フッサールが考えた「現象学的還元」とは?
「内在-超越」、「構成」、「絶対的所与性」……。
さまざまな批判にさらされてきた現象学の誤解をとき、その核心に迫る一冊。
近代哲学の重要な原理を平易に読み解く大好評シリーズ第三弾!

ジャンル
ノンフィクション
発売日
2012年
8月17日
言語
JA
日本語
ページ数
272
ページ
発行者
講談社
販売元
Kodansha Ltd.
サイズ
1.4
MB

カスタマーレビュー

ゆづ村長

竹田青嗣の『現象学の理念』解釈

現象学は、絶対的真理=超越は存在し得ないが妥当な認識=間主観は存在すると主張する。現象学的還元とは、主−客図式の代わりに内在−超越図式を採用し、一切の認識を内在に還元することである。内在は実的内在と構成的内在からなる。範疇的判断も絶対的明証性をもつ。
講義部に付属する用語解説や要約が、『理念』の理解に役立つ。本書の3割を占める後書きでは、正統派現象学者や先構成(=意識を構成する対象)を措定する全体論者、新田義弘、デリダなどの現象学批判に対する批判が行われる。
現象学に入門して私が特に興味深く感じた点は、知覚と想起が直接観取される実的内在に同じく含まれていたことである。これは物理的(科学的)世界観を採用している人には可笑しく思われるだろう。しかしコペルニクス的転回を経た人にとって、この類別は受け入れやすいのではないだろうか。
また、現象学的内省は意識自体を観察することは不可能である、なぜなら意識自体と観察された意識は異なるからである、という批判に対しては次のように答えることができる。現象学的内省により観取された〈対象化された意識〉は〈意識〉そのものとは異なるが、我々は〈意識(=超越)〉を直に認識できないため、〈意識〉の同一性の問題は〈対象化された意識〉の構造の同一性の問題に帰されるからだ、と。
現象学がいかにして超越論的唯我論を脱しうる、すなわち間主観性を得うるかについては、私の超解読によれば次のようである。
現象学は、超越論的ではなく「方法的」に独我論を用いて、超越に対する対象確信を形成する。私は他我および間主観性に対する対象確信を形成することも可能である。間主観的確信を自分が形成したときに限り、他者と共通する妥当な認識=客観認識が成立する。
他者であっても現象学的内省により不可疑な認識を知ることができるというのが現象学の売文句である。現象学が提示する内在−超越図式によれば、他者は超越であり構成的内在である。また「他我の構成」という言葉が表現するように、他者は内在において構成されるものである。從って、間主観=客観認識は自己の内在に閉じている。
しかしながら、現象学においては他我を(類比的とはいえ)構成できるとする点において、唯我論とは異なる様相を提示しているように思われる。
現象学的反省が他我問題をいかに解決するかについて『理念』には書かれていないという記述もあり、『理念』を超解読した本著ではなく、他著を当たれということなのかもしれない。

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