踊りつかれて
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3.3 • 6件の評価
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発行者による作品情報
誰かが死ななきゃ分かんないの?
首相暗殺テロが相次いだあの頃、インターネット上にももう一つの爆弾が落とされていた。ブログに突如書き込まれた【宣戦布告】。そこでは、SNSで誹謗中傷をくり返す人々の名前や年齢、住所、職場、学校……あらゆる個人情報が晒された。
ひっそりと、音を立てずに爆発したその爆弾は時を経るごとに威力を増し、やがて83人の人生を次々と壊していった。
言葉が異次元の暴力になるこの時代。不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷にあったお笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。ほんの少し時を遡れば、伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。
彼らを追いつめたもの、それは――。
APPLE BOOKSのレビュー
週刊誌の罪とSNSによる誹謗(ひぼう)中傷の罰を描き、第173回直木賞候補作となった社会派小説。ある日、インターネット上に突如落とされた爆弾。「宣戦布告」と銘打たれたそのブログに記されていたのは、芸能人の不倫や暴言などを取り上げ、過剰な個人攻撃ともいえる報道を行った週刊誌と、それを受けて“大炎上”したネットでの誹謗中傷への怒りと、その結果、社会的に抹殺されてしまった2人の才気あふれる芸能人への思い。そして匿名性と“一般人”という身分を笠に着て、2人に一線を越えた誹謗中傷を繰り返した83人の克明な個人情報だった。やがてその爆弾は着実に83人の人生を壊していく。そんな中、弁護士の久代奏は名誉毀損(きそん)で訴えられたブログの書き手「枯葉」こと瀬尾政夫の弁護を担当することになる。今や国内のネット空間では炎上が後を絶たないが、匿名の場所には対面ではとても言えないようなことを気軽に垂れ流す“安全圏のスナイパー”たちがはびこっている。本作は彼らが忘れている「実在」の人間が持つ質感やそれぞれの事情、人生を描き出し、週刊誌報道とネット社会が生み出す問題を暴き出しているが、そのうえで『週刊文春』で連載されていたという事実も意義深い。