転の声
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5.0 • 3件の評価
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- ¥1,600
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発行者による作品情報
【第171回芥川賞候補作】
「俺を転売して下さい」喉の不調に悩む以内右手はカリスマ“転売ヤー”に魂を売った!?ミュージシャンの心裏を赤裸々に描き出す。
APPLE BOOKSのレビュー
ロックバンド、クリープハイプのボーカル尾崎世界観が手掛けた現代のバンド小説『転の声』。ミュージシャンがエゴサーチに翻弄(ほんろう)され、空回りした果てに転売ヤー(転売屋)にすがる姿を描く。ライブチケットの転売により「プレミアム」感が付いてくる音楽業界。ロックバンドGiCCHOのボーカルである以内右手(いないみぎて)は喉の不調からうまく歌えないことに焦りを感じていた。エゴサーチをしてしまう彼はSNSに流れる遠慮のないさまざまな声に一喜一憂しながら、バンドのプレミアム感を上げるための方法としてカリスマ転売ヤー、エセケンの言葉に乗ってしまう。著者がミュージシャンであるからこそ描ける、思うように歌えない苦しみや葛藤といった心の機微や、歓声や手拍子が聞こえてくる臨場感あるライブの情景はリアルだ。転売が正しいとされる世界になってしまったら、というフィクションの世界の中で「俺を転売してくれませんか」と転売ヤーに懇願した主人公。そこに著者はアーティストとしての自分を重ねているのか、それとも…。