迷彩色の男
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- ¥1,700
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発行者による作品情報
〈怒りは屈折する〉。――都内のクルージングスポットで26歳の男が暴行された姿で発見される。事件の背後に浮かびあがる”迷彩色の男”を描いた、最注目作家の第二作。
APPLE BOOKSのレビュー
多様性への偏見が根深い日本社会の中で生きるマイノリティを描いたクライムスリラー。ブラックミックスのLGBTの4人が差別と抑圧の渦巻く社会を軽やかに欺いていく『ジャクソンひとり』で鮮烈なデビューを果たした安堂ホセの第2作で、第170回芥川賞候補作。男性同士が即物的な性行為を求め合う都内のクルージングスポット「ファイト・クラブ」。2018年12月23日、そこで26歳のブラックミックスの青年いぶきが何者かに切りつけられた姿で発見された。直前までいぶきと個室で過ごしていた同じくブラックミックスの“私”は、事件を起点に“迷彩色の男”にたどり着く…。シスヘテロ社会で共有されない性的なコマンド、職場で性的指向を見透かされないための“設定”。“私”と同じ属性を持つマイノリティ当事者の作者が描く世界は真実のトーンを有しているが、それだけではない。肉体を照らす青い光や鮮血の赤、そしてそこから連なるトイレマークのイメージや、何者にもなり得る迷彩色など、強烈な色彩感覚が小説のテーマを示し、執拗(しつよう)で刺激的な文体が社会に鎮座する傲慢(ごうまん)な“普通”を問いただす。『ジャクソンひとり』に登場する人物の前日譚でもある一方、国会議員がLGBTについて「生産性がない」と発言した2018年の日本を舞台に、屈折したヘイトクライムを描くことで時代を捉えた作品。