



逢瀬―横浜に咲いた絶世の花魁喜遊
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5.0 • 3件の評価
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
稀代の美女・喜遊。彼女は本当に実在したのか? 独自の観点で描く歴史小説。
開港したばかりの横浜。そこに江戸吉原を凌ぐ港崎遊郭が出来た。その象徴ともいえる壮麗な妓楼「岩亀楼(がんきろう)」に、喜遊という美しい遊女がいた。彼女は異人の客となり、汚される侮辱を拒み、自害。その事件は、誇り高い日本女性として伝えられ、いつしか彼女は、異人を排除する「尊皇攘夷派」の志士たちの心に燃える「倒幕の炎」の燭台となっていった。幕末に語りつがれた美女・喜遊の姿を描く歴史小説。
カスタマーレビュー
志を共有して生きる恋人たちの美しさ
江戸吉原にもその名が轟いたという絶世の美しさを誇った花魁、喜遊。
この本を読んで、私が本当に「美しい」と思ったのは、その美貌ではなく「志を持った生き方」だ。
志を共有していた想い人がいたからこそ、喜遊は、囲われた楼閣のなかでも誇りを捨てることなく、強く、輝きを放っていた。
その出自からしても、他の女郎とは全く異なる。彼女を取り巻く人々もまた世間とは一線を画す。父親の箕作周庵、中居屋重兵衛、そしてとくに際立って喜佐の許嫁である久原采女正の生き様は、私心を捨てて公儀のために命を投げ打って奔走する姿に、清廉な美しさを感じる。そこに臭い立つエゴイスティックな動機は微塵もない。
翻って、今の世に「志」と掲げる有名無名のリーダーたちに、この清廉さがあるだろうか?と、考えさせられる。「志」を掲げながら、大いに自己実現のための大欲を語る。こういう輩に、喜遊を死に追いやった武器商人アボットに感じた臭い立つ強烈な異臭を感じる。
国を憂える国士たる今の世のリーダーたちに、是非とも読んでもらいたい一冊である。
そして、日本のすべての恋人たちには、箕作喜佐と久原采女正のように、志を共有して同じ道を歩んでいくことが実に浪漫ちっくであるか。その熱い熱い情熱的な愛を知って、死が2人を分かつまで、輝き続けてもらいたいと切に祈る。