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騙され、裏切られ、絶望の淵に陥った宗吉。流れ流れて行き着いたのは遠江・浜松の町はずれにある宿「柏屋」だった。女中のお滝に身の上話を語った宗吉は、お滝からのわずかばかりの心付けを懐に、再びあてのない旅に出る。
そして、旅の途中に出会った侍から、五十両をある家まで届けてくれるように頼まれる。見たこともない大金を手に心がざわつく宗吉は、この金を元手に一山当てようとの思いにとらわれるが……。
大金をめぐって、人間の善と悪が交錯する中で、五十両をきっかけに人としての心を取り戻していく男の生きざまを描いた、山本周五郎の傑作短篇小説。昭和22(1947)年に『講談雑誌』に掲載された。
この作品には、昨今では不適切として受け取られる可能性のある表現が含まれますが、当時の時代背景、表現およびオリジナリティを尊重し、そのままの形で作品を公開します。