鏨師(たがねし)
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4.0 • 1件の評価
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- ¥750
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発行者による作品情報
無銘の古刀に名匠の偽銘を切って高価な刀剣にする鏨師。その並々ならぬ技術を見破る刀剣鑑定家。火花を散らす名人同士の対決に、恩愛のきずながからむ厳しい世界をしっとりと描いた第41回直木賞受賞作「鏨師」のほか、「神楽師」「つんぼ」「狂言師」「狂言宗家」など、著者が得意とする芸の世界に材を得た、平岩弓枝の世界のエッセンスが味わえる珠玉の初期作品集。あとがきに収められた、直木賞受賞時の初々しいエッセイと師匠・長谷川伸の暖かい序文も、平岩ファンには必読。
APPLE BOOKSのレビュー
第41回(1959年上半期) 直木賞受賞。史上最年少(当時)の27歳4か月で直木賞に輝いた平岩弓枝の『鏨師(たがねし)』。候補に挙がった時点では小説家修業を始めて1年半、完成作は短編5編だけ。平岩本人は受賞はまだ早いと選考日すら知らず、日本舞踊の稽古中に受賞の知らせを受けたという。『鏨師』は、刀剣というマニアックで格式高い世界に真っ向から斬り込み、鑑定家と贋作(がんさく)の名手がしのぎを削るサスペンス。のほほんとした受賞エピソードからは想像できない堂々とした筆力と取材力で、読者を火花散らす対決と悲劇に引きずり込む。刀剣鑑定家の福原は、義弟の志村が無名の刀剣に偽の銘を施す裏稼業に手を出したことから絶縁していた。ところがある日、死期が迫った志村から、姪の手で1本の刀が福原に持ち込まれる。それは志村の命とプライドをかけた挑戦状だった。贋作を高く売るために技術を磨き続ける鏨師の執念、ささいなミスが命取りとなる鑑定家の審美眼と膨大な知識に驚かされる。今読んでもまったく古さを感じさせない平明な文章も平岩作品の魅力だ。