「隔離」という病い 近代日本の医療空間
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- ¥880
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発行者による作品情報
恐怖の宣伝、強制収容、終身隔離……「病んだ」共同体はいったいどこへ向かうのか。ハンセン病を軸に日本社会の「病い」観を問いなおす。
APPLE BOOKSのレビュー
T伝染病の隔離療法という"排除のメカニズム"を考察した「『隔離』という病い 近代日本の医療空間」。感染力が強い病と考えられ、歴史的にもさまざまな負のイメージで語られてきたハンセン病を、ジャーナリストであり評論家でもある武田徹が、新たな視点から捉えた作品。明治以降、多くのメディアが取り上げてきたテーマであるが、本書が画期的なのは病気そのものではなく、ハンセン病患者を内包する共同体、つまり、彼らを強制隔離してきた社会に焦点をあてたこと。近代国家形成の歴史を俯瞰しながら、その他の感染症においてもタブー化された過去の隔離医療の実態を浮かび上がらせる。弱者に寄り添いながらも冷静に社会を分析する本書では、隔離患者に無自覚で著者の言うところの"忘れっぽい"共同体を構成してきたのが、私たち自身であることを指摘。読者に鋭い問いを突きつける、武田の批評眼が光る。本書を通じて隔離医療の歴史を振り返るだけでなく、社会問題に対して個人がどのように向き合っていくか、考える上でのヒントも得られる。