高野聖
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3.8 • 158件の評価
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発行者による作品情報
江戸文芸の影響を深く受けた怪奇趣味と耽美なロマンティシズムにより、幻想文学の先駆者とも評価される泉鏡花の短編小説で、幻想小説の名作。題名となった「高野聖」とは、中世に高野山を本拠にして、布教や修行のために各地を巡り歩いた行者(遊行者)の意味。若狭へ帰省する途中の“私”は、一宿を共にした僧侶が若かりし頃に体験した怪異譚を聞く。蛇と山蛭がおびただしく棲む森を抜け、妖艶な美女が一人で住む家に辿り着く。そこで僧侶が体験する超現実的な魑魅魍魎が跋扈するような夢幻世界を、鏡花は独特のリズム感溢れる文体で描き出す。1900(明治33)年、春陽堂書店の文芸雑誌『新小説』に発表され、当時28歳だった鏡花が作家としての地歩を築いた作品。物語の中心となる女妖怪は、中国の小説『三娘子』から着想したと言われる。
APPLE BOOKSのレビュー
文豪、泉鏡花の出世作にして代表作となった傑作短編。若狭に帰省する途中で出会った旅する僧侶の回想という形で語られる体験談は、信州から飛騨へ向かう山深い峠を通過する中で、不思議な異空間へと誘われる。山中に住む妖艶な女の誘惑により馬に変えられてしまうという、背筋がゾクゾクする恐ろしさを感じながら、どこかなまめかしく、ユーモラスでもある一夜の体験。僧侶という怪異を超越した存在でありながら、誘惑に乗りかけてしまう人間味のあるキャラクターだからこそ、回想の真実味が増していく。中国の怪談話を下敷きにしながら、ヨーロッパ的なロマンチックエッセンスを加え、さらに日本古来の民話的な土着性をないまぜにしており、豊富な語彙(ごい)が臨場感を高める。文体は闊達(かったつ)で歌うようにリズミカルで、現代のラップにも通じるリリカルな彩りがある。歌舞伎演目にもなった他、映画やテレビドラマにもなっており、時代を経てどんなに文明が進歩して近代化されたとしても、人を引きつける力のある作品。