魚服記
Publisher Description
「無頼派」「新戯作派」の破滅型作家を代表する昭和初期の小説家、太宰治の短編小説。金木にある馬禿山で、植物採集に来た都の学生が絶壁から滝壺に落ちて死ぬという衝撃的な出来事を見た少女スワの話。自叙伝的作品の「十五年」の中で、太宰自身が「作家生活の出発」と語っている作品。
Customer Reviews
朝お早う
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摩訶不思議な幻想譚
アルハさんによる
太宰治が24歳時に書いた幻想譚。 季節労働者の少女がある吹雪の夜に滝壺へと身投げし鮒へと変身する話、とあらすじだけなら何が何だかわからない話だが、最低限の描写で表現されている背景を読み解くと別なものが見えてくる。 吹雪の中に飛び出す直前の「疼痛」や「からだの重さ」は貧苦を紛らわす酒で理性を失った父に犯された事による破瓜の暗喩、少女がかつて父から聞いた龍になった少年の話で表される少年の罪が魚を家族の分まで食い尽くした事である事を考えると、最後に少女が罪の象徴たる魚に変貌したのは果たして救いなのか?