



黄色い家
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4.1 • 56件の評価
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- ¥2,000
発行者による作品情報
2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。
60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。
長らく忘却していた20年前の記憶――黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。
まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな〝シノギ〞に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい……。
善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!
APPLE BOOKSのレビュー
生きるために「お金」「家」そして「犯罪」にもがく女性の姿を描いた、川上未映子によるノワール小説。総菜店に勤める伊藤花は、偶然たどり着いたネットの記事で吉川黄美子の名を見つけ、忘れていた20年前の記憶を思い出す。水商売の母との先が見えない不安定な暮らしから高校生の花を連れ出してくれた黄美子。黄美子と始めたスナック「れもん」。「れもん」で出会った少女たちと黄美子の4人で家族のように暮らした家。金運を上げるための黄色いアイテム…。社会からはじき出された居場所のない少女たちが得た安息の地は、やがて思わぬ事故で奪われ、焦った花は非合法な“シノギ”に手を染めていく。自分たちの居場所を守るため、必死になって金策に走る花だが、いつしかお金を集めることが目的となり、周囲との関係性が変化してしまう。まるで祭りのように高まった熱気がはじけ飛んだ時、少女たちは大人に責任を問い、すべてを“ただの過去”として記憶の底に沈めた。だが、本当はその家で何が起こっていたのだろう。過去を振り返り自省する花の姿からは、人はいとも簡単に欲望に溺れ、都合よく思い込み、記憶を改ざん、そして忘れてしまうということを思い知らされる。